熊本市慈恵病院の「コウノトリのゆりかご」を視察しました。いわゆる「赤ちゃんポスト」です。
「コウノトリのゆりかご」には、賛否両論があります。反対派の主な意見は「安易な育児放棄を助長する」ということでしょう。
コウノトリのゆりかごができた2007年から5年ごとの受け入れた赤ちゃんの数は、83人、47人、31人と減ってきています。
「安易な育児放棄」が助長されていないことは、事実が明らかにしています。
「なぜ、育てられない子を産むのか。産んだ以上責任をもって育てるべきではないか」というご意見もあります。
今年(2022年)6月、千歳市のコインロッカーに生まれたばかりの赤ちゃん遺棄した事件がありました。2019年度全国では、新生児遺棄死亡を含む児童虐待死が78人にもなっています。また、2021年度児童相談所での虐待相談件数は207,659件と過去最多になっています。この現実を放置できないのです。
望まない妊娠や児童虐待、遺棄に至る経過は様々でしょう。
慈恵病院の蓮田健先生(院長)は、「私が現実に目の当たりにしたのは『安易(な育児放棄)』ではなく、必死な思いの女性たちでした…『慈恵病院が受け入れてくれてなければ、赤ちゃんと一緒に死ぬつもりで来た』と告白した女性もいました」としています。
あかちゃんを預けたある女性は、幼少期から親の虐待を受けて育ち、家から出て独立することが生きる希望でした。奨学金とアルバイトで生活し、子どもができたとき、「孫の存在がわかれば、親はきっと引き取ると言う。私を支配するための手段として赤ちゃんを利用する。そして赤ちゃんには私の時と同じ暴力が始まる」と言っています。
すべての命を守るために、大人が、そして政治がやるべきことがあります。
(東区民報 2022年11月27日付)