『保健室から創る希望』

山形志保さん(高校養護教諭)と福井雅英さん(日本臨床教育学会副会長)共著『保健室から創る希望』(新日本出版)の一部を要約してご紹介します。

あなたたちが世の光です

・・・サヤカは、6歳で母と死別、父はパチンコで借金を重ね夜逃げを繰り返しました。
高校入学後は、保健室等に入り浸り、喫煙問題もあり、3か月で退学します。
山形先生と一年以上音信不通になりましたが、風俗で働いていたサヤカが泣きじゃくり「帰りたい」と言い、4週間、先生宅に同居します。
独立し数か月後に連絡がついた時には予期せぬ妊娠に死にたくなるほどの恐怖を感じていたのでした。
しかし、だんだんと新しい命を迎える未来が喜びや希望に変わり、生まれた子の傍らで、サヤカは「幸せ」と言いました・・・

子どものつらい状況や、寄り添う養護教諭に心を動かされるのは、自分の人生の中に、似たような辛さ、理不尽な叱責を受けた時や、教師にクラス全員の前で恥をかかされた時のやり場のない思いなど、をなんとかやり過ごして来ても、寄り添って欲しかった思いが心の中に沈殿しているからではないでしょうか。
いま小中学校の不登校や、子どもの自殺が過去最多になっています。

儲けることを最大の価値だとする空気がつくられ、子ども同士が遊び喧嘩し育ち合う時間がなくなり、親も教員も疲弊するなか、最も弱い子どもが追い詰められ生きる力を奪われているのではないでしょうか。その子どもの苦しみが、社会の矛盾を表しています。

あとがきで、山形先生は、たくさんの困難を抱えている元生徒たちのことを、「あなたたちが世の光です」と書いています。

(東区民報 2023年11月05日付)

新日本出版社『保健室から創る希望』