図書館の自由

札幌弁護士会の調査で、10図書館が「警察から照会を受けていた」ことが判明し、道議会で取り上げました。

この「照会」は、刑事訴訟法197条第2項「捜査について…必要な事項の報告を求めることができる」によるもので、裁判官の令状の無いものです。
戦前・戦中の図書館は、「思想問題対策として…(長野)県下図館(ママ)から赤い本を駆逐」(「戦前期図書館統制の研究」小黒浩司)と思想調査の対象となり、「図書館長…は、マルクス主義に関するもの数冊を発見し、ただちに撤回」(同)と自己規制に陥りました。

戦後、「図書館の自由に関する宣言」(日本図書館協会綱領)が、「国民に対する『思想善導』の機関として、国民の知る自由を妨げる役割さえ果たした歴史的事実があることを忘れてはならない。図書館は、この反省の上に、国民の知る自由を守り、ひろげていく責任を果たす」と、宣言したのです。

私は、「『照会』に回答すべきではない…『宣言』を全面的に本道図書館行政に生かすべき」と質問しました。
教育長は、令状の無い「照会」には原則として答えないこと、「知る自由、表現の自由といった『宣言』の理念を尊重し、実践していくことが大切」と前向きの考え方を示しました。

図書館の自由が宣言されていても、こっそりそれを侵そうとする動きが現れてきます。憲法第12条は、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」としています。私たちは、自由を侵そうとするものの動きを油断なく監視し、自由を守る不断の努力を惜しまないことを改めて誓いあいたいと思います。

(2021年4月日中友好新聞札幌支部寄稿)